2010年11月17日
プロトコール(治験実施計画書)について
治験を依頼する製薬企業あるいは治験を行う医療機関が治験を行う際に必ず守らなければならない要件があり、これらの要件を実施計画書として作成したものがプロトコール(治験実施計画書)です。
◇プロトコール(治験実施計画書)に記載すること◇
治験を行う医療機関などや、治験を依頼する製薬企業は、治験を行うに当たり遵守しなければならない要件を、全てプロトコールに記載しなければなりません。
したがって、プロトコールには、治験の目的、治験を行う根拠、統計学的な考察、治験を行う組織、治験の方法などが記載されます。
◇プロトコールの遵守◇
治験は、プロトコールに記載されている内容を遵守して行わなければなりません。
治験がプロトコルに記載された内容通りに行われていなかった場合、治験が中止になったり、治験で得られた検査結果が無効とされたりします。
これは、治験の依頼者が治験に投資した費用と時間が、プロトコールの遵守を怠ったことで無駄になってしまうと言う、非常にリスクの高い問題になります。
このリスクを回避するために、治験の現場にはモニターと呼ばれる社員が製薬企業から派遣され、治験の実施状況を定期的にチェックするようにしています。
治験コーディネーター(CRC)について
治験は、非常に煩雑な手順を経て行われるため、治験コーディネーターと呼ばれる人たちがサポートしています。
この治験コーディネーターがどのようなものなのか、見ていきましょう。
◇治験コーディネーターの役割◇
治験が円滑に行われるように、担当医、被験者、依頼者などの関係者間の橋渡しを行う人ことが治験コーディネーターの役割です。
治験コーディネーターは、通常CRCと呼ばれますが、これは英語でClinical Research Coordinatorの略です。
治験業務の中で、医学的な判断が必要ではない業務全般という広い範囲が、治験コーディネーターの業務範囲です。
特に治験コーディネーターにコミュニケーションの能力が求められるのは、業務の中でもインフォームド・コンセントが重要な業務であるためです。
◇治験コーディネーターに必要とされる資質◇
治験では幅広い業務に関わる治験コーディネーターには、医療関連の業務経験者が求められ、実際にも看護師や薬剤師、臨床検査技師などの資格を持った人たちが多く活躍しています。
他にもパソコンを利用した事務能力の高さも求められています。
◇治験コーディネーターの主な業務◇
治験コーディネーターの業務は、項目としてあげると30以上になるほど広いですが、主な物は以下の通りです。
各種資料や計画書を作成し、関係者に連絡する治験開始前の業務。
被験者に対する、各種説明や被験者の窓口、また検査の立ち会いやスケジュールチェックを行い、使用済みの薬剤を回収するなどの、被験者への対応業務。
担当医師が必要とする各種資料の作成を補助したり、スクリーニング作業の補助を行い、また、各種の計画書や報告書を作成し、被験者の適正調査の補助を行うなどの担当医師への対応業務。
各種会議の設定を行うなどの調整業務。
他にも、医療機関の適格性調査や、担当医師の適格性調査、あるいは実施状況の報告やメーカー監査などへの対応といった、治験の依頼者への対応業務。
治験モニター(CRA)について
治験モニターはCRAとも呼ばれ、Clinical Research Associateの頭文字が使われています。CRCと呼ばれる治験コーディネーターと似ているのですが、その役割は、治験のモニタリング、つまり監視にあります。
◇CRAの役割◇
CRA、つまり治験モニターが所属しているのは、医薬品開発業務受託機関製薬会社でCROと呼ばれます。
CROはContract Research Organizationの頭文字です。
CRAは、治験が医療機関などで、GCPの規則に則って行われている稼働かをモニタリングします。
◇CRAの仕事内容◇
CRAの業務範囲は広く、以下の様なものがあります。
治験は、その目的や方法、さらには倫理上の決まり事などが多くあり、これらを治験の依頼主や実施者は遵守しなければなりません。この決まり事を盛り込んだプロトコールの作成はCRAの仕事です。
また、医療機関を実際に訪問して、治験を行うために必要な設備が完備されているかどうかの調査を行うこともCRAの仕事です。
治験には、被験者の人権や健康が守られていることを審査するIRB(治験審査委員会)があります。このIRBとの交渉もCRAの仕事です。
そして、医療機関を訪問し、治験がプロトコールを遵守したうえで実施されているかどうかの監視を行うのもCRAの仕事です。
他にも様々な仕事がCRAの業務範囲としてあります。
標準業務手順書(SOP)について
治験は、誰が行っても同じ精度で行われる必要があります。
そのために、作業範囲や作業手順について、治験に携わる人たちがきちんと把握している必要があります。
このことのために、標準業務手順書(SOP)が作成されます。
◇標準業務手順書(SOP)とは◇
標準業務手順書は、治験の現場では通常言いやすい略称としてSOPと呼ばれます。
SOPはStandard Operating Proceduresの頭文字です。
SOPは、治験の基準となる手順をまとめたもので、常に均質に治験が行われることを目的としています。
治験の依頼者や実施者は、作業を行うに当たり、SOPに基づくことがGCPにおいて義務づけられています。
SOPは、その内容よりも、書かれた手順が遵守されているかどうかが重視されますので、SOPにはあまり細かな規定は記載されず、基本的な手順について記載される傾向があります。
つまり、守れない可能性があることは、最初から盛り込まないようにしているケースが多いと言えます。